熊皮の冑を備える戸田家伝世甲冑
江戸時代。戸田康長着用と伝わる松本市重要文化財で、離れ六つ星紋が各部に見えます。
MATSUMOTO / NAGANO
黒い下見板の天守は、戦国末期の大天守と、平和な時代に月を眺めるため加えられた月見櫓を一度に見られる稀有な建築です。外からは五重、内部は六階。暗い中間階、急な階段、厚い壁を順にたどります。

HISTORY
前身の深志城は1504年頃の築城と伝わり、1550年に武田晴信が攻略しました。1582年、旧領を回復した小笠原貞慶が松本城へ改称。城名の変化は、支配者が入れ替わった信濃の政治状況を映します。
1590年に入城した石川数正と康長は、城下町と天守の整備を進めました。公式見解では、大天守・乾小天守・渡櫓は1593〜94年頃の築造。鉄砲戦を意識した狭間や石落とし、厚い壁を備えます。
1633年、松平直政の時代に辰巳附櫓と月見櫓が加わりました。防御のため閉じた大天守と、朱塗りの廻縁を持つ開放的な月見櫓の対比が、戦国から泰平への転換を語ります。
CHRONOLOGY
PEOPLE, OBJECTS & THE CASTLE
肖像や武具、城に残る意匠から、城主と城の関わりを時代順に紹介します。



石川数正と康長が戦うための天守群を整え、松平直政が泰平の月見櫓を加えました。その間に城主となった戸田家の資料には、甲冑、刀、紋瓦が残り、建築だけでは見えない藩主と家臣団の履歴を補います。
城内の鉄砲展示や実演は、狭間の高さと射撃姿勢を考える手がかりです。ただし掲載写真は現代の実演であり、城内所蔵の歴史的な火縄銃そのものではありません。
江戸時代。戸田康長着用と伝わる松本市重要文化財で、離れ六つ星紋が各部に見えます。
戸田家家臣の伝来刀。松本在城中の取得品ではないと公式解説が注意しています。
大手門枡形跡から出土。甲冑の紋と同じ標識を建築資料で確かめられます。
甲冑と出土瓦に見える離れ六つ星は、戸田家がこの城を受け継いだ証しです。建物だけでは見えにくい城主家の存在が、小さな紋から立ち上がります。
閉じた天守群に対し、月見櫓は外へ開いた構えです。二つを続けて見ると、城が戦いの備えから客を迎える場へ役割を広げたことが伝わります。
掲載写真は歴史的な火縄銃そのものではなく、現代の再現です。それでも射撃姿勢と狭間の位置を見比べることで、天守内部がどのように使われたかを具体的に想像できます。
FORTIFICATION
外観から数えにくい暗い中間階があり、敵に内部構成を悟らせにくくします。
壁面の開口を用途で分け、内堀を渡る敵を正面と側面から狙います。
張り出した床から、石垣に取りつく敵を真下に見る仕掛けです。
軟弱地盤で沈下を抑えるため、基礎に材木を組んだ構造が確認されています。
FIELD ROUTE
見どころを見落とさず、入口から出口まで歩きやすい順に紹介します。工事や入場規制がある日は、現地の案内に従ってください。
太鼓門から二の丸御殿跡へ。平城の広がりを見る
黒門から本丸へ入り、内堀越しに五棟のつながりを確認
地下階で石垣と柱の納まり、保存された鯱を見る
暗い階と急階段を上がり、戦うための天守を体感
乾小天守・渡櫓の位置を窓から読み直す
辰巳附櫓と月見櫓で、開放性が増した江戸初期の増築を見る
FOOD, TEA & ONSEN
松本城下では、城主と温泉の関係を場所までたどれます。

公式資料で確認
松本市は、浅間温泉に松本城主の入浴所だった「御殿の湯」が置かれたと解説しています。城を歩いたあとに浅間温泉へ向かうと、城主の生活圏を市街地の外までつなげて考えられます。
松本市「浅間温泉天満宮」で確かめるVISIT DETAILS
大人一人の通常料金と、見学できる時間、休館日、車で訪れる場合の駐車場をまとめました。年齢区分、団体料金、特別公開は公式案内でご確認ください。
確認日 2026.07.31。料金・開城時間・駐車条件は催事や工事により変わる場合があります。
DAY PLAN
CASTLE TOWN ROUTE
松本城から旧開智学校へ歩けば、武家の時代から近代教育の町へ移る流れを建物でたどれます。黒い天守と擬洋風校舎の対照も、この町ならではです。
所要時間の目安 追加90〜120分

WALKING ORDER
松本城の北側から旧開智学校へ歩く
擬洋風の正面意匠と教室内部を見る
市街地へ戻り、松本市立博物館で城下町の暮らしを補う
国宝建築
明治九年に完成した擬洋風建築です。天使、龍、雲など異なる意匠が同居する正面を、松本城の木造天守と見比べると町の変化が見えてきます。
公式情報を見る博物館
松本城下の成立から商業、祭礼、近代の暮らしまでを扱います。城の年表だけではつかみにくい、市民側の歴史を補える場所です。
公式情報を見る所要時間は移動と通常の見学を含む編集部の目安です。開館日、料金、展示内容は各施設の公式サイトでご確認ください。
AROUND THE CASTLE
BOOKS & DOCUMENTS
五重六階の天守が戦いに備えた構造と、月見櫓が加わった背景を図面や城主の記録から確かめます。
本文は各城の公式解説、自治体・文化財情報をもとに編集部が要約しました。伝承は確定事項と分けて記載しています。